【彼岸花】自然から習う|先人の知恵と相思の心
秋の彼岸に合わせて花を咲かせる「彼岸花」。その特性を利用して先人はお墓や田畑を守ってきました。それは何代も後の、会えることのない子孫のためでもあったのです。たくさんある彼岸花の別名から、その役割を考えてみます。
彼岸花の別名|毒花・痺れ花

彼岸花はその色から想像できるとおり全部分に毒があり、球根の部分は特に強いそうです。
毒の成分はリコリンというアルカロイドの一種で、水仙の毒と一緒。
間違って食べてしまうと、嘔吐・下痢・呼吸困難・麻痺を起こします。
触ると(汁がつくと)かぶれや痒みがでる場合もあるので、摘んだり折ったり食べたりしないことです。
「毒花」「痺れ花」「蛇舌曲」などは、その毒性から付けられた名前です。
彼岸花の別名|死人花・葬式花

昔は人が亡くなると木製の棺桶に納め、土の中に埋葬しました。(土葬)
前項で述べたとおり、彼岸花の球根には強い毒があります。
虫や動物から大切な人を守るため、人の手で積極的に墓地の周りに植えたのです。
「死人花」「葬式花」「地獄花」など、死を連想させる呼び名はここからきています。
同じ理由から、田んぼのあぜ道や小川にもたくさん植えられました。
生きる糧を守ることは大切な家族やコミュニティを守ること。
今だけでなく、未来の子孫のためをも想って生活の知恵を残したのですね。
彼岸花の別名|曼殊沙華・天蓋花

「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」は、サンスクリット語の「マンジュシャカ」(「赤い」という意味)に漢字を当てたものです。
仏典の多くはこの言語で書かれているので、仏教に関わる別名です。
『法華経』序品第一(法華経の序章)にこのような一節があります。
「曼陀羅華、摩訶曼陀羅華、蔓殊沙華、摩訶蔓殊沙華、而散仏上」
(直訳)
曼陀羅華、たくさんの曼荼羅華、曼殊沙華、たくさんの曼殊沙華、ブッダの上に散る
「今から法華経を説かれるブッダの頭上に、天界の華である曼荼羅華と曼殊沙華がたくさん降り注いで礼賛した。」
このような意味になります。
また、どこのお寺にも本堂に金ピカの天蓋がありますね。
彼岸花はその飾りに似ていることから、「天蓋華」と呼ばれるようになったともいいます。
彼岸花の別名|ハミズハナミズ

彼岸花はとても変わった植物で、花を咲かせて枯れた後に葉が出てきます。
葉は初夏まで光合成を続けて栄養を蓄え、そして再びお彼岸の頃に茎を伸ばして鮮やかな花を咲かせます。
彼岸花には「ハミズハナミズ(葉見ず花見ず」という別名もあります。
葉と花が同時に存在していない、という変わった特徴を端的に表しています。
葉も花も出会えないのに、ただひたすら相手を想って命をつないでいる、そんないじらしさが垣間見えます。
彼岸花の別名から浮かぶ先人の心

彼岸花の別名を探ってみると、当時の人たち(私たちのご先祖様)は、先祖を敬い、子孫を守るため、彼岸花を用いて墓と田畑を守ってくれていたことがわかります。
「先祖代々、子々孫々」
互いに会うことは出来なくても、ただひたすら相手を想って命をつないでいる。
彼岸花の特殊な生態と同じだと思いませんか。
その様子は「相思花」という別名で表現されました。
果たして、現代人のご先祖様への想いは十分なのでしょうか。
墓守が面倒だからと、お骨を工場へ送って機械で粉々にした上、冷たい海へ捨ててしまうような流行があるようですが。
相思の心が途切れないことを祈るばかりです。
- おしまい –

人生の苦しみや困難に直面したとき、智慧は荒波の中で光る灯台のような深い慰めとなります。心が押しつぶされそうなときにそっと寄り添う言葉や日本人としての誇りなど、宗教・慣習・歴史、ジャンルを問わず溜めていくブログです。この溜池から今のあなたに刺さる智慧があれば幸いです。
